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2016年4月13日

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『顎関節症ライブ実習コース』〜その3〜は、患者様治療後の考察です♪

IPSG副会長、岩田光司先生の講義、まとめをお伝えいたします。

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顎関節症の治療において、大変重要な知識は、中心位Centric Relationが確実に採れる事、そして目で確認することができない顎関節の中で、どのような状態にあるのかを想像できることも大切です。

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中心位とは。

・垂直顎間距離に関係なく、顆頭が関節窩内の最後方で緊張しない状態で位置し、そこから偏心運動が自由に行える。

・適切な垂直顎間距離において、上顎に対し下顎が取りうる最後方の位置

・正常な垂直顎間距離において、顆頭が関節窩内の最後方に位置する時の上顎に対する下顎の位置

・顎関節の関節窩の中で顆頭が関節円板に乗って、機能する範囲の最も後方、最も上方左右の真ん中でそこから自由に側方運動できる顎位

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向かって左の写真は関節円板に密着して顆頭が動いている理想的な様子です。

右側は、顆頭が下がってしまったために、圧がかからず上下関節腔が開いてしまっている状態です。

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Dr.Dowsonによる、中心位採得の様子です。

稲葉先生は、直接Dowson先生の実習も受講しました。

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現在の稲葉先生をはじめ、私達が行っている中心位採得方法はこのように、親指と人差し指を使い、軽く顎を押し上げるような感じで、オーストリアのシュラビチェック先生と同様の採り方をしています。

この採り方の利点は、片手が開く事。

中心位のバイトがスムーズに記録できます。

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患者様の筋症状は、咀嚼筋の他に僧帽筋にも痛みを感じていらっしゃいました。

特に腰痛と肩こりに悩まされていたようです。

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治療前の、EPAとポッセルトのサジタル(矢状断面)とフロンタル(正面)の記録です。

全体的に動きが小さい事がわかります。

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患者様の口腔内の様子は、補綴物もなく、大変良好な状態です。

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咬合診断にて、中心位(CO)と中心咬合位(CR)のズレを確認することができました。

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当初、右側の7番遠心に水平埋伏智歯があったため、右側の干渉が疑われましたが、診断してみると、左側にも干渉があることがわかりました。

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リテイナー装着時のDIGMAの記録です。

ポッセルトのフロンタルが大きく動いている事がわかります。

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術後の様子です。

EPAテストでは、COとCRの一致に加え、全体的に動きが大きくスムーズに変化しました。

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詳しく見てみます。

術前、術後の開閉口では、約2センチほどの差ががあります。

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開閉運動において、顎の動きが全く変わりました。

スムーズに関節結節を乗り越えている事がわかりますね。

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ゴシックアーチの記録においては、術前のフラフラとした小さな動きから、術後はほぼ一直線の大きな動きに変化しました。

素晴らしい変化だと思います!!

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顎関節の音が、あきらかにパチンとかカクッという音があれば、クリック音をとるのは比較的簡単ですが、ゴリゴリといった雑音をとるのは、かなり難しいケースだったと思います。

ひとつひとつ丁寧に診断をすることの大切さを学びました。

右側に雑音がわずかに残っていましたが、翌日患者様からご連絡いただいた内容をご紹介させていただきます(^_<)-☆

『週末は本当にお世話になりました。家に帰ってから、主人に見た目に変化があったことを言われましたが、何よりも体調に変化があったように思います。

顎に関しては、やや違和感が残ります。
理由は、術前、自分が感じていたよりも上にある感覚があるためです。
それは好ましい感覚ですが、一応ご報告いたします。
開閉は非常にスムーズです。
雑音が残ったとご報告しておりますが、開閉時、毎回鳴っていたものが、鳴る時もあるに変化し
正直びっくりしています。

昨夜はやや早く眠くなり、そのまま就寝しました。
そのせいもあってか、気になっていた首の後ろ側の凝った感じがないです。
首周りの温かい感覚も継続しております。

腰痛なども軽減しているようには思います。』

ということです♪

治療直後に現れていた、小さな雑音は、開閉時、毎回鳴っていたものが、鳴る時もある・・・

という状態に変化しているとのことです。

治療後、患者様が少し涙ぐむぐらいでしたので、今まで本当に辛い思いをされてきたのだなと感じました。

顎関節症で悩まれている方は、本当に大変な状態なのだなと思いましたし、それを見つけられ、また治療をすることができるのは、歯科医師、歯科技工士であることも再認識しました。

先生方から感想もいただきましたので、一部ご紹介させていただきます☆

*:..。o○☆゜・:,。*:..。o○☆*:゜・:,。*:.。o○☆゜・:,。

▼歯科治療の本意はやはり咬合であるということを改めて再認識しました。顎関節の治療がここまで科学的に順を追って治療できるということがびっくりしました。

▼顎関節の診査診断、治療と流れがわかりやすく、非常に勉強になりました。治療結果がすぐに出たので驚きでした。こういう診療がしたいと目標になりました。

▼初めて顎関節症の治療を見れて、あらためて咬合診査が大切だと思いました。これから顎関節症を作らない技工物の作製を心がけます。

▼2日間のIPSG実習コースでしたが、非常に楽しく学ばせて頂きました。また宜しくお願い致します。

▼素晴らしい治療を見学できたことはとても勉強になりました。

▼今回患者様が雑音をなんとかしたいというときはどうするのかと思いました。

▼まだわからないことだらけですが、ちょっとずつわかることが増えてきたのでこれからもがんばります。有難うございました。

▼今回の実習で咬合の安定、顎関節の安定がいかに身体に影響を与えるか再認識しました。今までの知識と治す技術がなかったことは歯科医師としてとても恐ろしいことだと思いました。IPSGに入会したこと、稲葉先生に直接教えて頂けることとても感謝しています。

・・・・・・・・・・・・・・・

2日間協力いただいた、患者様、そしてご参加いただいた先生方本当にありがとうございました!!

2016年4月12日

『顎関節症ライブ実習コース』2日目です。

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前日に印象採得した模型を、咬合器に付着し、チェックバイトにて顆路調整を行いました。

その際、右側の矢状顆路角は30度、側方顆路角は10度。

左側の矢状顆路角は30度、側方顆路角はマイナスと出ました。

臼歯の傾斜により顎の角度が消されてしまっている可能性があるため、ランディーンによる側方顆路の平均値、7.5度の平均値に設定し診断を行いました。

(このあたり、なかなか難しいと思います。IPSGで開催される『咬合認定医コース』または、次回開催される『咬合治療の臨床』にて詳しく学んでいただけると思いますので、ぜひご参加ください。)

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「咬合器にマウントする時に、重石を乗せたりゴムで縛ると教わったのですが、どうなのでしょうか?」

との質問に、

「膨張率の低い石膏を使っていますか?咬合器は頑丈なものですか?それを大前提として、咬合器に重石を乗せてはいけません。ぎゅーっと押し付けて、パッと離した時の収縮の方が大きいということを、大学で実験も行いました。従って、押えつけず、そのままにしておく事が大切です。」

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稲葉先生は、KaVo のプロター咬合器の開発にも携わりました。

その時の資料と、開発者のラングさんとのやり取りについても説明がありました。

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さて。

顆路とは側頭骨の関節窩に対して、下顎頭(顆頭)が関節円板を介して、顎が動いていく状態のことを言います。

その中で、下顎が前方に動いていく道を『矢状顆路角』といいます。

側方運動では、平衡側で矢状顆路角の前内下方を通ります。

これを『側方顆路角』といいます。

通常、この矢状顆路角、側方顆路角は咬合平面に対する角度で表し、咬合平面は、カンペル平面(補綴平面)とほぼパラレルであるため、カンペル平面となす角度としてとらえることができます。

ギージーは矢状顆路角は平均33度としています。

側方顆路角は矢状顆路角より、さらに内方を通るため、角度は5度程度急になります。

矢状顆路角と側方顆路角のなす角度をフィッシャー角と呼んでいます。

フィッシャー角は5度です。

さらに、これを水平面に投影した角度をベネット角といいます。

その角度はギージーによれば、13.9度でありますが、ランディーンによれば、下顎の側方運動開始から4ミリのところで、サイドシフトとよばれる動きが現れ、これをイミディエートサイドシフトと呼んでいます。

最初の4ミリを超えると、差がなくなり、その平均値は7.5度で個人差はみられません。

従って、側方顆路角は平均値7.5度で合わせていただければ、ほぼ問題ありません。

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こちらは、Dr.Okesonの顎関節の本から引用し、説明をさせていただきました。

上図は、関節円板が密着して動いている様子。

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そして、下図は、もう少しで関節円板が前方転移をしそうなイメージです。

今回の患者様の顎関節はこのような状態ではないかと推移します。

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顎関節の解剖をよく理解しておくことも大切です。

外側翼突筋のUpper headは、関節円板に停止。

そしてLower headは、下顎頸部に付着しています。

特に外側翼突筋Upper headは、咬合面の形態と密接に関わっています。

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今回は、皆様の熱いご要望に応じて(笑)スプリント製作も実習しました。

スプリントを製作する機械は、ドイツのエルコデント社。

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リラクゼーショナルスプリントで、フルバランスの咬合を作ります。

犬歯誘導型だと、関節を圧迫してしまいます。

特に、関節円板が落ちている患者様に犬歯誘導型のスプリントを装着すると、関節を突き上げてしまい、痛みを発症するため禁忌だと覚えておいていただければと思います。

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スプリントは1ミリのプレートにレジンを一層盛り上げ、たわまないようにし、フルバランスで咬合を作ります。

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スプリントの外形線です。

参考になると思うので、掲載させていただきます♪

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歯頸線に沿わせます。

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上顎はアンダーカットに入ると、外れ難くなるので一部だけ覆います。

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KaVo ARCUS DIGMA2による、顎機能運動の計測、治療前の状態、そして今回はスプリントを入れた状態でも計測を行いました。

そして、治療に入ります。

ここで、稲葉先生、28ミリの開口量だと咬合調整が難しいため、マニュピレーションを行いました。

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関節円板に下頭をより密着させ、痛みなく開口できるようになりました♪

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この時点で、28ミリから、46ミリまで、約2センチ開く事ができるようになりました。

途中から患者様が、

「音が消えました!」

とおっしゃっていました。(正確には少し雑音が残っていましたが、患者様の感覚はだいぶ違うようです。)

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咬合調整に用いる咬合紙はブルーレッドレーダー。

上顎に青、下顎に赤の色がつくようにし、最後に咬合紙がなしのゼロミクロンの状態での咬合調整を行える咬合紙として稲葉先生が愛用しています。

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咬合器で診断した場所と同じ部位を調整。

歯に溝を切る、窩を少し深くすることで、関節円板を密着させました。

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治療終了後のDIGMAです。

明らかに治療前、後のデータが変わりました。

こちらに関しては、『顎関節症ライブ実習コース』〜その3〜の考察でお伝え致します(^_<)-☆

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最後に。

「開閉は非常にスムーズです。私が感じていた、顎の音が取れて、正直びっくりしています。雑音が少し残ってはいますが、私が今迄悩んでいた物とは全く違います。意識せず、口を開くことができたのは、記憶にないぐらい遠い昔です。気になっていた首の後ろ側の凝った感じもなぜか気になりません。顎の周り、首周りが温かい感覚があります。先生方、お忙しい中2日間本当にありがとうございました。」

と嬉しい感想をいただきました。

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治療後、一緒にお弁当を頂きました。

わずかな咬合調整により、患者様の感覚は大きく変わり、顎の周りの筋肉の緊張が取れ、 沢山嬉しい感想をいただき、受講生皆が嬉しく思いました。

やはり、顎関節と咬合は密接に関わっているのですね♪

『顎関節症ライブ実習コース』〜その3〜では、治療前、後のデータを比較したいと思います(^_<)-☆

2016年4月11日

こんにちは。

稲葉歯科医院、院長稲葉由里子です。

4月9日,10日(土,日)『顎関節症ライブ実習コース』が開催されたのでご報告させていただきたいと思います♪

『顎関節症ライブ実習コース』では、実際に顎関節症で困っていらっしゃる患者様をお呼びし、問診から治療まで、すべて先生方の目の前で、デモンストレーションいたします(^_<)-☆

KaVo社のPROTAR evo 7 咬合器、フェイスボー、ARCUSdigma2下顎運動測定器、を用いた咬合診断システム化により、確実な原因を探すことができます。

咬合からのアプローチで顎関節症を治療する実習はIPSGでしか行っていない、非常に貴重なセミナーです。

最近は、顎関節症と咬合は関係がないという風潮があります。

顎関節症は触らない方が良い、咬合調整をしてはいけないと言われています。

しかし、それは学問を止める事。

と稲葉先生は言います。

インレーやクラウン、先生方は日常的に沢山歯を削っています。

顎関節症だけ削ってはいけないと言うのはいかがなものでしょうか。

削ると言っても、ほとんどが修復物、そして天然歯においてはほんのわずかです。

咬合診断を行えば、顎関節症の治療は非常に単純な事が多いです。

1本のインレーでも、4分の1顎のような小さな咬合器ではなく、全顎の咬合器に付着して製作することで、歯科医師、歯科技工士が顎関節症の発症を未然に防ぐこともできます。

IPSGでは20年間、咬合からのアプローチで顎関節症の患者様を治してきました。

ぜひ、2日間じっくり勉強していただきたいと思います。

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今回、患者様としてご協力いただいたのは、私の友人です。

実は、昨年のライブ実習の模様をFacebookで見ていてくださって、次は私もお願いしたい!と思ってくださっていました(^_^)

メールで症状を聞いてみたところ・・・(ライブ実習当日にお越しいただくので、事前情報はメールのみです)

・症状は口が大きく開かない。
開ける時にはくの字に開きます。
顎がカクッてなるので、歯医者さんの友達に聞いてみたところ、
顎関節症?と言われ、ひどくなると開かなくなると聞いてビクビクしています。
口を開く時、意識せずに開けた事が記憶にない感じです。

・犬歯が下の歯の形に削れています。
主人の話、母の話を総合すると、子供の時から歯ぎしりがひどいようです。
一度、歯科でリテイナーを作りましたが、メンテナンスできず放置です。

・顔以外の気になるところは、腰痛が徐々にひどくなり、2週に一度以上、マッサージに行っております。

・偏頭痛があったこともありますが、この2年ぐらいはない気がします。

ということでした。

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レントゲン写真です。

ひとつも修復物がなく、また歯周病もなく、大変綺麗な歯列をされています。

矯正治療の経験もありません。

顎関節症の原因として、インレーやクラウンなどの修復物が関与することがありますが、それも今回は当てはまらないようです。

それでは、一体なぜ??

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顎関節のレントゲン写真の診断の目安として、関節の変形がないかどうか、また円板に乗っているかどうかは、下顎頭と側頭骨の間に隙間があるかどうかをチェックします。

今回の場合、ぎりぎり隙間があったので、円板は脱落していないと診断しました。

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姿勢を観察します。

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瞳孔線や肩の高さの不均衡、指先の位置異常、脊柱の湾曲などを比べます。

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筋触診の方法について、外側翼突筋を口腔内から触診する方法、胸鎖乳突筋の起始である乳様突起から停止の胸骨までの触診し、左右どちらに異常があるかを調べます。

顎の構造と、筋肉の付着位置を確実に頭に入れておく事が大切です。

患者様、とても緊張をされていましたが、現在の症状や悩みについて、先生方の前で沢山お話をしてくださいました。

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クリック音の検査は、ドップラー聴診器を用います。

浅側頭動脈の血流を目安にそこから6ミリ前方に顎関節があります。

左右共に、かなり関節が傷ついた様な雑音が聞こえました。

雑音は、関節円板が傷ついている時に鳴ります。

これについては、2日目に詳しく解説いたします。

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開口量は、28ミリ。

クローズドロックの状態だと20ミリ前後の開口量なので、ギリギリ関節円板に乗っているという状態だと思います。

患者様はご自分で開口制限をされており、思いっきり開けるのが怖いそうです。

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上下の印象採得、フェイスボウトランスファーを行いました。

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中心位を2枚、チェックバイトを左右それぞれ記録を採りました。

中心位は、ナソロジーの古い考え方で、現在はそのような考えは存在しない。

とお考えの先生がかなりいらっしゃるというのを先日、聞き大変ビックリしました。

また、季節や気温によっても中心位が変わる事があるから当てにならない・・・

などなど。

全顎治療、咬合再構成をするパターンにおいて、中心位が決められないと仕事をすることができないと思います。

季節や気温で変化してしまったら、いつまで経っても補綴物が完成できませんし、咬合器を使って技工士とやり取りをすることも不可能となります。

中心位が確実に記録できるようになると、臨床の幅が広がります。

そして、全顎治療に自信を持って取り組む事ができるようになると思います。

中心位という言葉を最初に使ったのは、ナソロジーの始祖の一人であるB.B.McCollumで、1921によって名付けられた用語です。

当初は中心位は下顎を最後方位押し付けたみ位置で開閉すると安定した軸で再現できることから、ここを中心位と定め、咬合を再現する方法を発表しました。

その後、ナソロジーではStuartらによってRUMポジションとして、最後退位を中心位として咬合構成を行なってきました。

しかし、1973年にCelensaによって最後退位で装着されたリハビリテーションの、予後の精度を計測した結果を発表しました。

それによれば、32症例の内,30症例に咬頭嵌合位とのずれが0,02〜0.36あったという報告がありました。
それ以後、中心位は下顎頭は前上方にある事が望ましく、関節円板の再薄部に位置する部が中心位として理想であることとなったのです。

この位置は、歯列とは何ら関係ありませんが、歯列の咬合状態が咬頭嵌合位の時、顎関節が中心位をとるのが理想であることから、咬合を中心位に導く方法が考えられました。

最も理想的な関係は中心位と咬頭嵌合位が一致することです。
これが『Point in centric 』です。

しかし、多くのケースで不一致であるとが多く、中心位で下顎を閉じて行くと、どこか最初に閉口路を邪魔をする接触があります。

これを中心位の早期接触と呼び、しばしば顎関節に悪い影響を与えてしまいます。
これが『Slid in centric』です。

そこで、これを調節するために咬合調整を実施します。
顎関節を安定させながら咬頭嵌合位を作ることが非常に大切です。

ナソロジーにおける中心位の概念の違いが弱点となってしまい、ナソロジーを否定される方がいらっしゃると思いますが、全てが間違っていたわけではありません。

ナソロジーは一度は学ばなければいけない大切な知識だと、稲葉先生はいつも皆様にお伝えしています。

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上顎の模型です。

切歯乳頭から正中を確認し、ハーミュラーノッチの位置も見ておきます。

有歯顎のときの状態をよく覚えておくことが、総義歯の知識の参考ともなります。

という話もありました。

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下顎の右側の8番はレントゲンを見てもわかるように水平埋伏智歯です。

7番の傾斜に何か原因があるということも予想する必要もあります。

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フェイスボウトランスファーは歯科治療の際、診断と治療の基本になる作業です。

しかし、現実に一般の臨床で、この作業を行っている方はどの位いらっしゃるでしょうか?
おそらく10%に満たないのではと思います。

フェイスボウトランスファーは頭蓋の基準面を咬合器に付着する作業です。

したがって、咬合器の大きさも頭蓋と同じ大きさの物が要求されます。

ボンウィルの三角は一辺が10cmで成り立っていますので、顔面の幅で12cm程度の大きさが必要です。

フェイスボウトランスファーにより幅12cm程度の咬合器にトランスファーします。

歯列の三次元的位置を再現します。

すなわち、模型の付着位置を頭蓋骨に対し正確に位置付ける事が可能になります。

この様に付けられた模型により正確な診断と治療を行う事ができます。歯列の左右前後の傾き、スピーの彎曲、ウイルソンのカーブなどの診断が可能になります。

これは、顎関節症の診断と治療に大きな助けとなります。

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両顆頭と、下顎の前歯の切歯点を結んだ三角をボンウィルの三角(10センチ)といいますが、最低でもこの大きさの咬合器でないといけません。

小さな咬合器では不可能です。

ちなみに、ボンウィルの三角と咬合平面(曲面)とのなす角はバルクウィル角(平均26度)ですね☆

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天然歯の咬合湾曲には一般的によく知られているスピーの湾曲があります。

このスピーの湾曲は矢状面での咬合湾曲です。

さらに前頭面からみると、下顎の臼歯は舌側咬頭が頬側咬頭より低いため、あるいは舌側にわずかに15度ほど歯軸が傾斜しているために前頭面に湾曲ができます。

この湾曲は半径4インチ(10センチ)直径では8インチ(20センチ)の球体を下顎の歯列においた形になります。

(ちょうど、写真に映っている手鏡が、直径20センチの球体なので、参考になると思います♪)

これは、モンソンが提唱したモンソンの球面説といわれるものです。
モンソンカーブは一般に前頭面の面を言われていますが、矢状面、前頭面の両方で湾曲が生まれます。

したがって、通常モンソンカーブは前頭面のことを示しますが、スピーの湾曲と前頭面の両方の要素を持っています。これは、咬合様式を作る際に、大変大切な曲線です。

もうひとつ。

ウィルソンカーブは、何だったけ?

と混乱してしまうと思いますが、ウィルソンカーブはモンソンカーブと同じ前頭面からみたカーブです。

ウィルソンカーブとモンソンカーブは同じと考えていただいて構いません。

モンソンカーブとウィルソンカーブの違いは、モンソンカーブはスピーの湾曲の要素を持ち合わせていることです。

ということで、1日目だけで、盛り沢山な実習となりました。

明日は、咬合診断、リテイナー作りから始まり、ディグマによる記録、そして治療という流れになります(^_<)-☆

2016年3月15日

先日、私の母が編集し製作した、

『ライブで見せる究極の総義歯Ⅱ』をDr.シュライヒにお送りしたところ、9枚もの長いお手紙をいただきました。

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Dr.シュライヒは、とても絵が上手でいらっしゃいます。

1926年生まれ、今年90歳とは思えないぐらいの文章力と、詳細な記憶力に驚かされました。

ガンタイプの印象材がでたことで、シュトラックデンチャーの精度が更に向上したことは喜ばしいことだと書かれていましたが、情報として、父である稲葉先生に伝えておきたい事が、まだまだ沢山あると書かれていました。

以下、Dr.シュライヒによるお手紙の文章の一部です。

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臼歯のOrthotype/Orthositeは、Dr.Rainer Strackによって開発されました。

彼は約70年前、尖端の尖ったピラミッド型で臼歯を改善することを考案しました。彼は、様々な噛み合わせによる下顎骨の動きの研究を行っていました。

小さなピラミッド型の角をお互いにくっつけて並べると、その間の部分が咀嚼によるすべての歯の動きをカバーすることを発見しました。

そして、彼は上記のように並べ、歯の形を作りました。

Dr. StrackにはEugen Schlaich(オイゲン・シュライヒ)という優秀なマイスター技工士がいました。

彼は過蓋咬合、通常咬合、交叉咬合の3種類のサンプルを作りました。

Dr.Strackは、Ivoclar社にこのサンプルを持ち込み、製造することに至りました。

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4000件にも及ぶ、下顎の総義歯の長年の研究報告から、ボンウィル三角はヨーロッパではあまり耐久性がなく、下顎の切歯中央点にも耐久力があまりないと判断しました。

しかし、この中央点は切歯点と共に、関節部分に適切な人工歯排列をすることにより耐久力を得る事ができます。

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私は、退職前の数年間、第二大臼歯の義歯の端に、最高のバランスを持つ接触点を見つけました。

噛む事によって義歯の安定を助けます。

Ivoclar社退職を余儀なくされた後、Onatomatは計画から外されました。

私は自宅で義歯と器具の改良に励みました。

人工歯は天然歯と同じように上手く機能すべきです。

歯のない患者の咀嚼圧は約20~30キロに対し、全ての歯が揃った若者の咀嚼圧は70~90キロと証明されています。

胃にとっては、よく咀嚼することが必要です。

私達は、その最善の可能性を患者に提供しなければいけません。

また、より良いIvocapシステムも作りました。

普通にIvocapで重合することは、35度でエアコンなし(ハワイのような)状態では不可能です。

また、2500メートルの高地でも問題があります(南アメリカ)。

水が70〜80℃で沸騰してしまうからです。

Ivocapシステムは、100℃のお湯が必要なのです!

以前、徳島県四国で研修の時に製作した患者の下顎骨は、テーブルのように平たく、Ivocapシステムの大きなフラスコの設計図を描きました。

Dr.Strackの理論、そして私のアイデアを継承している、稲葉先生のセミナーが上手くいくことを願っています。

・・・・・・・・・・・・・

Dr.シュトラック義歯の理論を応用し、まとめ上げ総義歯製作の体系を創り上げたの、Dr.シュライヒの功績からまだまだ勉強すべき事が沢山ありそうです。

まだまだ、お元気そうなので、再び美しいリヒテンシュタインを訪れてみたいな(^_<)-☆


2016年3月13日

当院顧問の稲葉繁先生は、1978年ドイツ、チュービンゲン大学の客員教授として留学をしていた際に、Ivoclar社主催の総入れ歯のセミナーを受講しました。

その時の補綴研修部長が、Dr.シュライヒです。彼は、ミュンヘン生まれのドイツ人です。

ミュンヘンで歯科技工士の資格を取り、その後矯正学を学び、Dr.の資格を取りました。

その後リヒテンシュタインのイボクラーの補綴部長として迎えられ、イボクラーのデンチャーシステムを完成させ、世界中に普及をしました。

現在のBPSの前身です。

そこでは、日本の歯科医療教育による総入れ歯とは、全く違う方法で行われていて、大変な衝撃を受けたといいます。

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稲葉先生が代表を務める、IPSGスタディーグループ発足の時、Dr,シュライヒをお招きし、総入れ歯の3日間実習コースを開催しました。

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実際に患者様の総入れ歯を3日間で製作するという形の原点となりました。

それから間もなく、稲葉先生は、ガンタイプのシリコン印象材が開発されたのを機に、「最終印象を上下顎同時印象で採る方法」を開発、発表しました。

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そういった繋がりから、Dr.シュライヒは引退する際、沢山の資料やスライドを稲葉先生に託しました。

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そこには、シュトラックデンチャーを絶やさないでほしい、世界中に広めてほしいという願いが込められているのです。

日本で「総義歯の大家」といわれている方々は、少なからずDr.シュライヒの影響を受けています。

しかし、「オリジナルを学ぶこと」は何よりも大切だと思います。

日々進化し続けている歯科医療ですが、新しい技術であるかのように発表されたことは、実はすでに、何十年も前に行われていることだったりもします。

オリジナルを知っていれば、そういった情報に惑わされることがないのです。

〜Dr.シュライヒの経歴〜
・1926年ドイツミュンヘンで生まれ、父親はワイン作りのマイスター
・ミュンヘンで歯科技工士の資格を取得し、その後矯正学を勉強ドクターの資格をとる
・リヒテンシュタインのイボクラー社で補綴研修部長となり、イボクラーデンチャーシステムを完成させる
・その後イボクラーデンチャーシステムを広めるため世界各地で講演
・ブラジル、サンパウロ大学から名誉博士の称号を受ける
・1994年イボクラー社を退職

Dr.シュライヒはイボクラーデンチャーシステムで大きな業績を残しました。

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1. ナソマート咬合器はデュッセルドルフ大学のべドガー教授が開発しました。
2. 印象はミュンスター大学のマルクスコルス教授のイボトレーを用いました。
3. ゴシックアーチ描記のためのファンクショングラフはポーランドワルシャワ大学のクラインロック教授からヒントを得たものです。
4. 人工歯はチュービンゲン大学のDr.シュトラックのオルソシット人工歯を用いています。
5. 重合方法はイボカップシステムを開発しました。

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これらのまとめ上げ総義歯製作の体系を創り上げたのが、Dr.シュライヒです。
義歯のコンセプトは尊敬するDr.シュトラック義歯の理論を応用しました。

特にそれまでの義歯の基本はヨーロッパで主に用いられていたギージーの歯槽頂間線法則でしたが、それによると上下の人工歯の力の方向は歯槽頂を連ねた方向となり、どうしても上顎は小さくなる結果、上顎の頬側に空間が生じてしまい、義歯のボーダーの封鎖が難しいため維持が悪い結果となってしまいました。

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Dr.シュトラックは歯槽提とは関係なく口腔周囲筋の力を借りて、元有った場所に人工歯を排列し、義歯を安定させる方法を考えました。

Dr.シュライヒはこの理論を正確に再現しようとして、上記の1~5までの構成を創り上げ、素晴らしい義歯を完成させました。

1994年にDr.シュライヒがイボクラー社を退職して間もなく、彼の弟子であったMr.フリックが補綴部長となり、複雑なデンチャーシステムを単純化し、新たにBPS(Biofunctional Prothetic System)として応用されるようになりました。

上下顎同時印象法による総義歯はイボクラーのデンチャーシステムをさらに向上させ、シュトラックのデンチャーを確実に再現するように改良を加え、1996年に新しいデンチャーシステムを完成させ現在に至っています。

*:..。o○☆゜・:,。*:..。o○☆*:゜・:,。*:.。o○☆゜・:,。

実は、私が歯科大学に入る前、Dr.シュライヒのリヒテンシュタインのご自宅に一週間ほどホームステイをさせていただいたことがあります。

当時は、そんなにスゴイ方だと全く思わず・・・父である稲葉先生の仕事仲間ぐらいにしか思っていませんでした(^_^;

サボテンが趣味で、毎日数時間、永遠とサボテンの話を聞かせて頂いた事を思い出します。
そして、自転車もお好きで、2人で毎日お城巡りをしました。

私との会話の中に一切歯の話題がなく、それ以外の趣味があまりにも豊富で、どんな事にも興味を抱く方であったからこそ、このような素晴らしいシステムが開発されたのでしょうね。

Ivoclarの名前の由来ご存知でしょうか?

「Ivory 」アイボリー「clear」明るい から取ったそうですよ。

Dr.シュライヒから頂いた、9枚のお手紙の内容をもう少し詳しく、次回お伝えしたいと思います。




2016年3月 1日

こんにちは。

稲葉歯科医院院長、稲葉由里子です。

2016『パーシャルデンチャー・テレスコープシステム実習コース』が開催されたのでご報告させていただきます♪

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全国から沢山の歯科医師、歯科技工士の先生にお集り頂きました。

ドイツ最先端義歯テレスコープシステムは、歯科医師、歯科技工士のチームワークが非常に大切となるのでこのような学びの場があることを心から嬉しく思います。

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今回、素晴らしいスペシャルゲストをお招きしました。

神奈川歯科大学付属横浜クリニックインプラント科の林昌二先生です。

林先生とは、ISOI国際インプラント学会へ出席させていただいたときに、IPSG20周年にお招きした、Weber教授よりご紹介いただきました。

林先生は1996年にドイツ、チュービンゲン大学、Weber教授のもとに留学をされました。

稲葉先生が1978年、その18年後ということになります。

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33歳という若さで教授となったWeber教授。

こちらQDTの記事の中には

『チュービンゲン大学補綴第2講座の主任教授、Hener Weber博士が本学術大会において"固定性および可撤性の補綴における新しいテクニック"について講演される。1982年からチュービンゲン大学の教授となり、世界的に活躍している若手のホープである。〜中略〜西ドイツといえば、すでにご承知のごとく、アタッチメントコーヌスクローネをはじめとして、新しい治療様式の開発がさかんなメッカである。Weber教授は補綴学分野において新しい技術の開発を行っている事から考えて、いかに先駆的な研究をしているかわかっていただけるだろう。・・・』

という内容で紹介されていました。

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ドイツ人は日本人に近い感覚があり、一度仲良く波長が合うと、日本人以上に仲良くなります。

アメリカに留学する先生が多い中、ドイツで学んだ経験は大きかったとおっしゃっていました。

林先生は、ドイツ医学と日本医学の架け橋となり、ご自身が学ばれた事に対して恩返しをしたいともおっしゃっていました。

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林先生は、Tuebingen大学で電鋳の研究を主にされていらっしゃいました。

今、ドイツでは鋳造に変わり、電鋳や放電加工の技術が大変進んでいます。

ジルコニウムとゴールドの複合などは、鋳造では不可能ですが、電鋳だからこそできるメリットがあります。

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こちらは放電加工技術による、シュベンクリーゲルの加工をしているところです。

電鋳と放電加工の違いが、いまいちわからない方、多いと思いますが、電鋳は貼付ける方法、放電加工は掘り出す方法と私は理解しています(^_<)-☆

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さて、現在日本では、インプラントの上部構造のほとんどがスクリューによる固定、そしてセメント合着によるものだと思います。

しかし、高齢社会が進んでいく中で、清掃性が悪い事、粘膜負担に出来ない事などが大きなリスクとなると思います。

患者様自身が取り外しを行える事で、メンテナンスも容易になります。

天然歯のみでなく、インプラントとのコンビネーションもドイツでは盛んに行われており、今後日本に求められる技術となるのは明確だと思います。

インプラントオーバーデンチャーの欠点について

・心理的な問題

・アバットメント歯冠高径スペースが必要

・メンテナンス

・リライニング

・食偏介入

などがあるかと思います。

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可撤性(取り外しができる)テレスコープにおけるメリットは、

清掃性の向上、そしてインプラント周囲炎の改善などが上げられます。

また、粘膜負担が可能となるため、インプラントの本数が少なくともすみます。

補綴的リスクファクター

ブラキシズム、本数、サイズや歯冠・インプラント体比、傾斜埋入、側方力などが、可撤性テレスコープを行う事により解決できるメリットがあります。

"Passive Fit"

電鋳や放電加工技術の強度や適合は今ある歯科技工で一番精度が高い技術です。

"Excellent Fit"とは技術的に考えられる適合精度の限界を意味します。

精度のランクとしては、

Good fit,Average git,Loose git,Poor fitがあると言われていますが、Passive fitは歯科における鋳造法で制作された冠等の適合限界を意味します。

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Extrakoronale Geshiebe

歯冠外アタッチメント。

素晴らしいですね!

リーゲルテレスコープに付与する、シュレーダーゲシーベと同じ役割をします。

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ドイツでは、固定性から可撤性にという傾向にあります。

なぜなら、ドイツではアタッチメントによりリジットにできる技術があり、130年の歴史があるからです。

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Pin Attachmentなど、Weber教授も盛んに取り入れているテクニックです。

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林先生がTuebingen大学に留学してからのドイツの流れは、

以前は機能を優先したスクリュー固定

そして、審美優先の時代はセメント合着

現在は、リカバリー優先の可撤性テレスコープというように進化しています。


最後に・・・

林先生より

『インプラント学会において、可撤性テレスコープの話をする機会がありますが、テレスコープを知る先生が少なく、やはり、やはり大学教養過程で補綴講義に取り入れないといけないと思いました。

卒後教育でもされていない現状から、正しい知識と技術が必要になり稲葉先生の存在は非常に大きいと思います。

講義にお呼び頂いてありがとうございました。』

とご連絡いただきました。

IPSGでは、これから林昌二先生と共に、テレスコープシステムを広めていきたいと思います。

稲葉先生は、テレスコープ全盛期にドイツへ留学するというチャンスを得、帰国後沢山の長期症例を作っています。

患者様の口の中でどれだけ長く機能できるのかが、大切なことではないでしょうか?

この技術を日本で絶やさないように、なんとか広めていきたいと思います♪

2016年1月12日

こんにちは。

稲葉歯科医院、院長稲葉由里子です。

先日開催された、『テレスコープシステムの臨床』のご報告をさせていただきます。

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今回講師を務めるのは、IPSG代表稲葉繁先生そして、IPSG副会長岩田光司先生のお二人です。

稲葉先生は、1978年に西ドイツへ留学をしました。

Tuebingen大学のヴィリー・シュルテ教授の論文に感銘を受け、彼の顎関節症の講義を聞く事が目的でした。

当時、日本歯科大学クラウンブリッジの助教授をしていたこともあり、Tuebingen大学のケルバー教授のもとに在籍しました。

ケルバー教授は、テレスコープシステムが得意であったことから、顎関節症の勉強と共に、ドイツで開発されたテレスコープシステムについて、学ぶチャンスを得ることになります。

稲葉先生が初めて見たテレスコープがリーゲルテレスコープ。

今まで見た事がない装置にショックを受けたそうです。

コーヌスクローネは、フライブルグ大学のカールハインツ・ケルバー教授が生んだ方法です。

稲葉先生は、客員教授として招かれたので、大学の中で診療、活動ができ歯科医師会にも入会していたそうです。

ドイツから帰国してみると、日本でもコーヌスクローネは、コーノスクラウンと呼ばれていて日本でもブームになりつつありましたが、方法がドイツとは違っていたと言います。

一番間違っていたことは、抜髄しないといけないと言っていた事です。

ドイツでは生活歯が原則です。

IPSG20周年記念では、Tuebingen大学のWeber教授からドイツ最先端のテレスコープシステム情報を頂きましたが、放電加工のテクニック、コバルトクロムの加工が非常に盛んで、天然歯とインプラントの融合についても沢山の症例を講演いただきました。

天然歯とインプラントをテレスコープによって二次固定し、22.23年の長期経過症例を得られている事は大変素晴らしいと思います。

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稲葉先生がドイツから帰国してすぐに行った症例です。

なんと。

35年経過している長期症例で、今現在も患者様のお口の中で機能しています。

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当時は、すべてゴールドで治療を行っていました。 

コーヌスクローネとは異なり、リーゲルテレスコープは、着脱のときに維持力が掛かりません。

また、支台歯を一次固定する事ができるのが特徴です。

リーゲルテレスコープの維持装置には、いろいろなものが使われますが、代表的には回転リーゲル(ドレーリーゲル)と旋回リーゲル(シュベンクリーゲル)があります。

回転リーゲルは、リーゲルテレスコープが考えられた最初のもので、歯と歯の間に設置するものです。

直径1.5mm程度の白金線(パルマドール)を使い近心と遠心を4分の1づつを削合し、直径と半径を使い、外冠に設置された半径の溝に白金線を回転させて着脱させるものです。

この弱点として、使用している内に白金線が曲がったり、歪んだりすることがあります。もちろん修理が可能ですが、最近では用いる事が少なくなりました。

旋回リーゲルは、回転リーゲルが歯軸に直角に使うのに対し、歯軸に平行にパルマドールを使い、歯軸に直角にレバーを旋回させて内冠に設置したリーゲル孔にレバーの先端を入れ、外冠を固定する型のリーゲルです。

最近では、旋回リーゲルの方がその耐久性や製作の容易性から、使用頻度が高くなりました。

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下顎は、前歯部はコーヌスクローネそして、たぶん8番を利用しているので、クリアランスが足りないため、アンカーバンドクローネを応用しています。

これにより、義歯の安定に大切な4点支持を得る事ができます。

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こちらが、外冠です。

リーゲルテレスコープと違い、コーヌスクローネの維持力は摩擦力です。

4点支持が得られた事で、患者様は35年という長期にわたり使用することができたのだと思います。

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他にも、最近のコーヌスクローネの症例についても見る事ができました。

舌側に厚みを付ける事で、リンガルバーの代わりになります。

こちらの方が、患者様にとって違和感がなく快適なようです(^_^)

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上顎レジリエンツテレスコープ、下顎リーゲルテレスコープ症例。

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テレスコープシステムを患者様に提供するにあたり、咬合の知識は必須となります。

フェイスボウトランスファーを行い、咬合器に付着すること。

中心位で仕事ができると、歯科医師、歯科技工士の情報交換を円滑となります。

余談ですが・・・

IPSGでは、5月から、『咬合』に特化したコースが開催されます。

『咬合認定医コース』

今後、一歩先の質の高い仕事を目指していらっしゃる先生方におすすめします(^_<)-☆

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こちらは、38年間、学校の給食室で働いていた方です。

退職をし、審美的にも機能的にも口元の美しさを取り戻したいとのことで、近所の歯科医院を訪れましたが、治療が終わった結果がこちらです。

黒い金属が沢山入っていて、噛み合わせの平面も整っておらず、これでは治療が終わったと言えないはずです。

患者様はプライドを取り戻すことができません。

そこで、稲葉先生のもとを訪れました。

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患者様は一番最善な治療を求められていました。

だとすると、このような方法がベストなのではないでしょうか。

上顎リーゲルテレスコープ、下顎コーヌスクローネという、大きなケースとなりました。

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治療後、一番最初に褒めてくれたのはお孫さんだったそうです。

「おばあちゃん、きれい!」

って何度も何度も褒めてくれたことで、大変感謝してくださり、心に残る症例となりました。

あれから、10年以上経過していますが、問題なく使って頂いています。

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チタンでのテレスコープ症例です。

やはり、チタンは軽いので支台歯が失活歯が多かったり動揺がある場合などに適応されると思います。

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テレスコープシステムを過去のものだと勘違いされてる先生が多いのも事実。

それは、日本では正しい方法が知られていないからだと稲葉先生は言います。

実際ドイツを訪れてみて、ほとんどがインプラントとテレスコープ技工であることにビックリされるはずです。

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ドイツでは国家試験は教育された教授が行います。

日本では全国統一の国家試験なので、特徴がありません。

自分が教えた学生の実力は教えた教授が一番理解しています。

無事、国家試験を合格すると、お酒が用意されていて乾杯するそうですよ♪

粋ですね!!

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コーヌス角とテーパーの違いを間違って理解されている方も多くいらっしゃいます。

稲葉先生の35年経過症例のように、正しく製作されたコーヌスクローネに細工はいりません。

リベースも必要ありません。

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リーゲルテレスコープは、今後、インプラントリーゲルなど利用範囲が多いと思います。

今回、参加してくださった、半分の方が技工士でした。

ぜひ、応用範囲を広げ、患者様に最善の治療を提供していただきたいと思います♪

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続いて、IPSG副会長の岩田光司先生の講演については。

稲葉歯科医院、小西浩介先生にバトンタッチします(^_^)

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岩田先生の講義、そしてパワーポイントすべてが素晴らしく、感激した一日でした。

何度聞いても、勉強になります。

お話もおもしろかったです(^_^)

後日、岩田先生の講演に関してもご報告させていただきます♪

2015年12月22日

IPSG代表、稲葉繁先生の講演です。

『わたしの臨床50年を振り返って』

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1964年の日本は戦後の経済成長と東京オリンピックの開催で沸き返っていました。

そんな時、稲葉先生は歯科医師として歩み始めました。

当時の日本の歯科医療は発展途上でした。

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卒業後国家試験に合格はしたものの、あまりに歯科医療が徒弟制度的で興味が持てなかったので、大学院に進み学問的で理論的な勉強をして見たいと考えました。

1966年ころに保母須弥也先生がアメリカから帰国され、メタルボンドが日本に紹介されました。

同時にナソロジーが衝撃的にデヴューし、ラウリッツェン、スチュアート、ピーター・K・トーマス、ギシェーらの各先生が研修を行いアメリカとの差をまざまざと見せつけられました。

そのころから稲葉先生は歯科医療の在り方を見つめなおし、常に歯科医療により全身の健康保持には重要な一部門であることを深く考えるようになりました。

丁度その頃この度の特別講演をして下さる桑田正博先生がアメリカで活躍されている噂が流されてきました。

先生はメタルボンドポーセレンの開発者であると同時に前記の先生方と仕事をされると同時に、世界各地で講師として研修をされ、指導者として日本の歯科界を牽引されている方です。

この当時、稲葉先生はナソロジーを徹底的に学びました。

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その後1978年にドイツのチュービンゲン大学に留学し、アメリカにはないテレスコープシステムに代表されるドイツ式補綴を覚え、また顎関節症の治療方法を会得してきました。

それから現在まで約50年多くの患者様の治療に取り組んできました。

こちらは、稲葉先生が当時チュービンゲン大学の学生達に講義したスライドです。

『咬合面は地図である』

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咬合面の谷や山にはすべて意味があります。

咬合面の8つの要素、そしてワックスコーンテクニックは、歯科医師、歯科技工士の共通の大切な知識です。

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稲葉先生は、当時日本から離れ、世界中の歯科の巨匠から沢山の事を学んできました。

若いドクター達に伝えたい事は・・・

『日本の歯科医療がトップだと思っていてはいけない。

世界から立ち後れている事は多々あり、常に海外にアンテナを張る必要があります。

これからは、英語を学び、海外の情報をしっかり得ることが大切です。

私は、ドイツに住んでいた事で、ドイツ人の考え方、生き方を学ぶ事ができました。

若い先生方はこれから、チャンスを掴んでいただきたいと思います。』


IPSG Scientific Meeting のスペシャルゲスト、歯科業界で、この方を知らない人はいないくらい、
世界で活躍されている技工士の桑田正博先生です。

〜略歴〜
クワタカレッジ   校長
愛歯技工専門学校  名誉校長
ボストン大学歯学部 客員教授
天津医科大学    客員教授
アメリカ歯科審美学会(AAED)  ライフフェロー
アメリカ歯科審美協会(ASDA)  フェローメンバー
国際歯科セラミック学会(ISDC) フェローメンバー
国際歯科学士会(ICD)      名誉フェロー
ヨーロッパ歯科審美学会(EAED) 名誉フェロー
アメリカ補綴歯科学会(AP)    オーナラリーフェロー
ロシア歯科医師会          名誉会員

桑田先生は、金属焼き付けポーセレンの開発などが評価され、Academy of Prothodontics
(アメリカ歯科補綴学会)の名誉会員を授与されたり、数々の栄誉賞を受けています。
今後、日本の歯科技工技術・制度を向上させていくには、桑田先生の存在が不可欠です。

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今回、快く講演を引き受けてくださった桑田先生。

長い間海外でお仕事をされていたこともあって、私の印象は、とても紳士。

やはり、実力のある方の振る舞い、態度、言葉はどれをとっても一流ですね。

今回、快く講演を引き受けてくださった桑田先生。

歯科医師、歯科技工士の割合を考えて、3つのパターンの講演を準備してくださっていたそうです。

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世界で最初の歯科医師、First Dentist はPierre Fauchardと言われていますが、日本の歴史を振り返ると、日本の木床義歯、デンチャーの技術は大変素晴らしかったと言うお話から始まりました。

確かに、ジョージ・ワシントンの入れ歯よりもずっと優れていたかもしれません。



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桑田先生は、歯科界のレベルアップのために1962年、ニューヨークへ渡米されました。

そこで、メタルボンドの開発チームに入る事になります。

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History of P.F.M

1960年当時、日本には歯科の情報がほとんどありませんでした。

桑田先生は、Father of Occlusionと呼ばれる、かの有名なスカイラーからナソロジーの基礎知識を直接教わったとおっしゃっていました。

ロングセントリック、ワイドセントリックなどを発表された先生。

ボンウィル、バルクウィル角などの咬合の知識もスカイラーから教わったそうです。

凄いですね!

そして、写真は桑田先生の初めてのフルマウス症例であり、長期症例です。

素晴らしいです。

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世界中の誰もやっていないことを、桑田先生は挑戦してこられました。

1965年、保母須弥也先生との写真。

歴史の証人として、日本の歯科界を失い本当に残念だとおっしゃっていました。

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ワックスコーンテクニックを広めた、P.K トーマスとは、世界中を一緒に回って講演をしました。

支台歯形成についても、歯の形態的特徴から咬合面の厚み、解剖学的に細かく計測した形成方法について、私達歯科医師に沢山のヒントをいただきました。

丸みをつけることで、咬頭に圧縮圧を受け止めることができること、ジルコニアがチッピングする原因なども教えてくださいました。

歯科医師、歯科技工士のコミュニケーションツールとなる

ディープシャンファー

ベベルドショルダー

ライトシャンファー

そして、マージンの限界角度50度など。

お互いの共通知識をまとめてくださり、プロビジョナルの奥深さを学ぶことができました。


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桑田先生こそ、歴史の証人。

教科書にでてくる、歯科界の巨匠達としっかりと絆を繋いできて、日本の歯科界の向上に貢献されています。

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『人は生涯のうち逢うべき人には必ず逢う。しかも、一瞬早かりもせず、遅かりもせず。」

素晴らしい言葉ですね!




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桑田先生、そして稲葉先生もこの言葉によって導かれたのかもしれません。

これを機会に、歯科医師、歯科技工士共にレベルアップを計り、コミュニケーションがスムーズになるようにお互い知識を高めていくことができれば素晴らしいですね♪

桑田先生、本当にありがとうございました。

2015年12月21日

今年最後のIPSG包括歯科医療研究会の大きなイベント、"IPSG Scientific Meeting 2015"が開催されましたので、報告させていただきます。

会場は日本歯科大学九段ホール。

全国から沢山の先生方にお集りいただだき、ありがとうございました!

歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士がお互いの知識の情報交換し、レベルアップを図る1年に1度開催されるIPSGの大きなイベントです。

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今回のトップバッターは、稲葉歯科医院、小西浩介先生です。

『患者満足度の高い診療を目指して』

IPSGでは初めての発表となりますが、堂々と落ち着いていて素晴らしいと感じました。

稲葉先生のアシスタントは歴代数々のドクターがされてきましたが、現在では皆、IPSGの指導者として活躍されています。

小西先生が稲葉先生のアシスタントを通して感じることは、メンテナンスに来られる患者様の多くが、30年を越える長期症例であること。

なぜこんなにも多くの患者様を、長期症例にすることができるのか。

確実な診査診断、そして設計はもちろんのことですが、やはりドイツでは120年以上の歴史あるテレスコープシステムを稲葉先生自身が一次情報を得て実際に治療されているからということをお話されていました。

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片側遊離端症例コーヌスクローネ、リーゲルテレスコープどちらを選択するか迷う方が多いように感じます。

遊離端義歯は後方が水平に動き、あたかも魚の尻尾を降っているかのように左右に動いてしまいます。

そこでクラスプ義歯では対処する事が難しくなります。

テレスコープクラウンhが装着されると、動きがなく遊離端いは良いと思われますが、コーヌスクローネに使いますと、二次固定となり、支台装置が離れているため、最後方の歯に負担がかかりすぎます。

その結果最高峰の歯が支点となり、その前の歯は浮き上がってしまい、コーヌス効果が失われてしまいます。

余程条件がよくない限りコーヌスはお勧めできません。

さらに最後方の歯が無髄歯である場合には、咬合力により歯根破折が生じてしまいます。

有髄歯の支台であることも大前提です。

また、最後方の歯に負担がかからないように前方の歯は一次固定をするのが良いと思います。

このような条件から、『リーゲルテレスコープ』が最善と選択しました。

リーベルは2本の小臼歯を内冠で固定し、さらにその遠心にシュレーダーゲシーベと呼ぶ、長さ5ミリ程の延長ダミーのような装置を作り、その遠心にリーゲルの閂装置を作ります。

そのようにしたリーゲルテレスコープ義歯は二次固定されているので、咬合力が小臼歯に分散され、最後方の支台には無理がかかりません。

また、咬合力により外れるような事もありません。

コーヌスクローネを片側遊離端症例から挑戦する方多いと思いますが、余程条件が揃わない限り、行わない方が良いということは、大変貴重な情報だと感じました。

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最後に、患者様に最善の治療が提供できるのは、稲葉歯科医院のチームワークによるものだとお話をいただきました(^_^)

会場の先生方の笑いもとるなど、聞く人を飽きさせない素晴らしい発表でした♪

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稲葉歯科医院 院長 稲葉由里子 顧問 稲葉繁

稲葉歯科医院
院長 稲葉由里子

昭和44年に父、稲葉繁(現・顧問)が文京区伝通院で稲葉歯科医院を開業、平成11年に場所を移して秋葉原で新しく開業しました。

「入れ歯が合わず、食べたいものが食べられない」
「口を開けると金属のバネが見えるのがいやだ」
「うまく発音できないので、しゃべるのがおっくう・・・」

このような入れ歯のお悩みをお持ちの方、多いのではないでしょうか。

当院では、入れ歯の本場ドイツで直接学んだ技術を活かし、つけていることを忘れるくらい、自分の歯のように何でも噛めて、笑顔に自信がもてる入れ歯を作っております。

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