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2016年6月27日

こんにちは。

稲葉歯科医院、院長稲葉由里子です。

2016年6月25日 〜ヨーロッパの総義歯の源流を学ぶ〜『総義歯の基礎と臨床』が開催されましたので、ご報告させていただきたいと思います。

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今回も全国から沢山の歯科医師、歯科技工士の先生方にお集りいただきました。

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稲葉先生は、チュービンゲン大学のシュトラック教授が開発したシュトラックデンチャーを原型とした上下顎同時印象法による総義歯をはじめて20年以上になりますが、現在迄大変良い結果を得ています。

私達は、人工臓器として噛むという人間のもとになるものを作らなければなりません。

一旦歯を失って、味わいのない流動食になってしまったら、人生の楽しみがありません。

総入れ歯によって、食事を噛む喜びを再び取り戻し、他人とのコミュニケーションをはかることができるというのは、人生においてお金に換えられない価値があります。

「総入れ歯は人間の英知を結集したもの」

残念ながら健康保険は、あまりにも安い評価なので満足いくものを作る事ができませんが、患者様の中には、その価値を十分に理解してくださり、私達の技術に託してくださる方が沢山いらっしゃいます。

そのような価値を改めて考えて、私達は質の高い総入れ歯を提供する技術を身につける必要があります。

「私は半世紀もの臨床経験があります。総義歯のこれまでの歴史について私にしか伝えられない事が沢山ありますので、ぜひ皆様にお伝えしたいと思います。」

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日本の総義歯の技術は実は非常に古く、1583年に作られています。

当時としては長寿の74歳で往生した紀伊・和歌山の願成寺の草創者・仏姫の拓殖の木から作った木床義歯です。

当時は現在のように優れた印象材や模型材もなく、咬合器もない時代に、適合性に優れ、噛める義歯を作ることができたものであると、感心してしまいます。

当時の義歯の製作方法を調べてみると、非常に合理的であり、仏教芸術の伝統を受け継いでいることがうかがえます。

その製作法の鍵は、蜜蠟を使った印象採得と咬合採得を同時に行うことです。

これは蜜蠟を鍋で温め、それを一塊として患者さんの口腔内に入れ、咬合位を決定した後に口腔内の形を採得するというものです。
一塊にしたものを上下顎に分けたのであるから、正確な咬合位の再現が可能になるのは当然です。

稲葉先生は日本の歴史から総義歯を学び、上下顎同時印象ができる方法がないかずっと模索していました。

そしてガンタイプの印象材が開発されたのを機に、最終印象を上下顎同時印象をする方法を開発します。

稲葉先生の総義歯は、世界最古の木床義歯による上下同時印象、そして化石の原理が原点です。

化石は一つのものを二つに割っても、必ずもとに戻ります。

総義歯も一緒でひとつの印象を咬合器上で、ふたつに分け、最後に戻すという考えです。

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上下顎同時印象法を行って、総義歯を製作するシステムの利点はつぎの通りです。

・咬合採得、ゴシックアーチの描記、フェイスボートランスファー、上下顎同時印象をわずか1回で行うため、合理的であると同時に来院回数の減少が図れる。

・咬合採得した位置で最終印象を行うため、顎位の誤差を生じない。

・印象採得中に嚥下を行わせるため、口腔周囲筋の印象採得が可能である。

・最終印象をフェイスボートランスファーし、咬合器に付着できる。

・印象面に口腔周囲筋、口唇、舌の形態を再現することができる。

・ニュートラルゾーンに人工歯を排列できる。

・サブリンガルルームを利用することにより舌による良好な維持が期待できる。

床を後舌骨筋窩まで延長する必要がなく、舌の動きを阻害することがない。

・イボカップシステムの応用により重合収縮を補正し、適合が良好なため、ウォーターフィルム減少を得ることができ、維持がよい。

・顎堤が極度に吸収している症例でも、頬筋、口唇、舌の維持ができる。

さらにこのシステムを応用し、オーラルディスキネジアや、脳卒中後の麻痺のある患者さんに対してよい成績を上げている他、顎関節症を伴う総義歯患者においてもよい成績をあげています。

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近代総義歯学の基礎を築いた、スイスの歯科医師のAlfred Gysi(アルフレッド・ギージー)の歴史をたどりました。

Gysiはカンペル氏の平面のコンセプトを作ったり、 シンプレックス咬合器、トゥルバイト人工歯の開発など、沢山の業績を残しています。

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ギージーは様々な咬合器を開発しました。

シンプレックスの咬合器、ハノーの咬合器、ニューシンプレックス咬合器や、Trubyteの咬合器、それぞれ、すべてフェイスボートランスファートランスファーをしています。

そして、人工歯の大きさは、顔の大きさの16分の1という基準も、100年経った今でも使われています。

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左上の図は、Condail顎関節顆頭と Incisal前歯がうまく協調がとれて、大臼歯と小臼歯の咬頭傾斜角が噛み合う。

という歯車に例えた有名な図だそうです。

右上の図では矢状顆路角の平均値、33度であることを述べていて、現在でも使われている貴重な内容を図に表した物です。

その他にも歯槽頂間線法則について、骨の吸収が進行していくと、咬合平面と歯槽頂間線のなす角度が80°以下になり、交叉咬合排列にするという説明の図が右下にあります。

これが、ギージーの義歯の弱点とも言えます。と稲葉先生。

ギージーの排列では、頬筋のサポートが完全に得られない他、食渣が頬側に入りやすく、常に食物が停滞した状態になります。

今回も、ギージーの歴史を辿ることで、本当に沢山の知識を確認することができました。

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1949年ドイツ、チュービンゲン大学のシュトラック教授は、それまでのギージーによる歯槽頂間線法則を否定し、口腔周囲筋による安定を求めました。

歯列に対し、口腔周囲筋・唇・舌の力の均衡がとれるところに、即ち、もと有ったところ『ニュートラルゾーン』に歯を並べると共に、頬筋・唇・舌により義歯を安定させる方法を開発し、さらに顎機能に調和した人工歯を開発し特許を取得しました。

現在使われている、オルソシットがそれです。

最初は陶器で有名なフュッチェンロイター社の陶器でしたが、イボクラー社のコンポジットの人工歯となりました。

歯槽骨がないような顎堤でも、維持を発揮でき、排列も自由に行うことができます。

上の図は、シュトラックがオルソシットの特許を取った時の貴重な写真です。

詳細な顎運動を計測し、ピラミッドの重なりを歯の咬頭とし、特許を取得した図もあります。

シュトラック教授は、チュービンゲン大学のケルバー教授の前の教授で、シュライヒ先生は非常に尊敬している教授でした。

1978年、稲葉先生は、たまたま、シュトラック教授の話を当時、Ivoclar社補綴研修部長で総義歯の講師をしていた、シュライヒ先生に話したことで、交流を持つきっかけとなったと言います。

このように、稲葉先生の『上下顎同時印象法による総義歯』には歴史的背景があります。

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1978年ドイツ、チュービンゲン大学の客員教授として留学をしていた際、IVOCLAR社主催の総義歯のセミナーを受講しました。 その時の補綴研修部長が、Dr.Hans Shleichです。

大変な衝撃を受けたと言います。
日本の教育の総義歯とは全く違う方法で行われていました。

その時IVOCLARでみた方法は、スタディーモデルを上下顎同時印象でアルギン印象で行っていました。

稲葉先生は、それ以来、これをどうにか、上下同時に最終印象で、そしてシリコン印象で行いたいと、ずっと考えていました。

そして、20年前稲葉先生が代表を務めるIPSG発足を機会に、Dr.Hans Shleichを招き、IPSG発足記念講演を開催しました。

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こちらがその当時の写真です。

IPSG発足して、21年なので、ちょうど21年前の写真ということになります。
(左上のモノクロの写真には、わたしも写っています・・・
日本歯科大学の講堂で開催された、とても懐かしい写真です。)

それから間もなく、稲葉先生は、ガンタイプのシリコン印象材が開発されたのを機に、最終印象を上下顎同時印象で取る方法を開発し、発表しました。

日本の総義歯は残念ながら遅れています。
現在の排列もギージーの方法のままです。

上下顎同時印象法は、特殊なものなので、大学の教育に取り入れられることはありません。

エビデンスがあっても、国家試験には結びつかないので、大学ではなかなか取り入れられるのが難しいテクニックなのだと思います。

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〜シュライヒ先生について、Dr.Hans Schleich〜

・1926年ドイツミュンヘンで生まれ、父親はワイン作りのマイスター
・ミュンヘンで歯科技工士の資格を取得し、その後矯正学を勉強ドクターの資格をとる
・リヒテンシュタインのイボクラー社の補綴研修部長となり、イボクラーデンチャーシステムを完成させる
・その後イボクラーデンチャーシステムを広めるために世界各地で講演活動をする
・ブラジル、サンパウロ大学から名誉博士の称号を受ける
・1994年イボクラー社を退職。

〜シュライヒ先生の功績〜
・ヨーロッパの多くのプロフェッサーの業績を義歯の製作というテーマでシステム化し、イボクラーデンチャーシステムを作り上げた。
・即ち、印象はミュンスター大学マルクスコルス教授の上下同時印象用トレーであるイボトレー
・咬合器はデュッセルドルフ大学のベトガー教授のナソマート咬合器のシステム
・ゴシックアーチ描記はポーランドワルシャワ大学のクラインロック教授の描記法、ナソメーター
・人工歯はチュービンゲン大学のシュトラック教授のオルソシット等を取り入れ、さらに印象材、カップバイブレーター、トレーレジン、イボカップシステムを開発し、総義歯製作の体系を創り上げた人

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Dr.Hans Shleichが、今のBPSシステムのインストラクターの大元だったことは、あまり知られていません。

シュライヒ先生は、引退するとき、すべての資料、スライドを稲葉先生に託しました。

世界中に広めてほしいと。 

シュトラックデンチャーを絶やさないでほしいと。

シュトラックデンチャーにおける、排列、重合、上下顎同時印象法に関する細やかなテクニックは、IPSG副会長、岩田光司先生からお話をいただきました。

稲葉歯科医院、小西浩介先生レポートの予定です(^_<)-☆

総入れ歯の歴史を、年代ごとにこんなに語れる先生は稲葉先生、そして故岡部宏昭先生だけだと思います。

ずっとずっと聞いていたい程、素晴らしい歴史を知る事ができました。


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稲葉歯科医院 院長 稲葉由里子 顧問 稲葉繁

稲葉歯科医院
院長 稲葉由里子

昭和44年に父、稲葉繁(現・顧問)が文京区伝通院で稲葉歯科医院を開業、平成11年に場所を移して秋葉原で新しく開業しました。

「入れ歯が合わず、食べたいものが食べられない」
「口を開けると金属のバネが見えるのがいやだ」
「うまく発音できないので、しゃべるのがおっくう・・・」

このような入れ歯のお悩みをお持ちの方、多いのではないでしょうか。

当院では、入れ歯の本場ドイツで直接学んだ技術を活かし、つけていることを忘れるくらい、自分の歯のように何でも噛めて、笑顔に自信がもてる入れ歯を作っております。

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