かみ合わせと顎関節症の密接な関係

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かみ合わせと顎関節症の密接な関係

こんにちは。

稲葉歯科医院、院長稲葉由里子です。

 

2017年3月19日『顎関節症の臨床と治療』セミナーが開催され、全国から沢山の先生方にお集りいただき、海外からも歯科技工士の先生が受講してくださいましたので、ご報告させていただきたいと思います。

 

咬合(かみ合わせ)と顎関節は関係がないという風潮がありましたが、昨今その考えが見直されるようになってきました。

ジルコニア、CAD/CAM補綴、インプラント補綴において、顎関節を考えないわけにはいきません。
これからは、顎関節を知っているか知らないかで、歯科医師、歯科技工士も2極化するといっても過言ではないでしょう。

 

 

世界で最初の顎関節のスプリントは、コステンのワインのコルクで作られたスプリントです。

5ミリ程の厚さに切ったコルクを臼歯に使いました。

否定はされていますが、関節を下にさげるという、コステンのアイデアは素晴らしいと思います。

 

◆咬合を念頭においた顎関節症に対する考え方の変遷

 

●1930年代のCosten Syndromeは低位咬合による顆頭偏移が難聴をはじめとするさまざまな症状を引き起こし、その治療法として咬合拳上が有効であるという考え方が受け入れられました。

 

●Schuylerをはじめとして、ただ画一的に咬合拳上するのではなく下顎運動時の影響を重視し、昨日的に咬合を考える人もいました。

 

●咬合を単に器械的にとらえるだけでなく、顎機能あるいは歯周病との関係を重視した生理的咬合の考え方を主張する術式は、Ramfjord,Posselt,Krogh Poulsen,石原などの傑出した学者を生みました。

 

●1970年代に入ってLaskinの影響を受け、咬合が軽視され、筋機能障害が重要視されましたが、Farraerは臼歯部の咬合支持の欠如が関節円板障害の原因として重要であることを強調しました。

 

●1970年代から80年代にはWeinberg,Gerberは顆頭偏位と咬合異常に関するX線的研究が発表され、クリッキングやロッキング症状として現れる顎関節内障が注目を集めるようになりました。

 

●1980年代は顎関節内障全盛となり、CT、MRIを使った診断技術が向上しました。

 

●1990年代になってふたたび咬合異常が軽視され、疼痛を重要視するようになりました。これに対し、日本、ヨーロッパでは顎機能障害の病因として咬合異常を重視する考えで、確実に診断方法が進歩しています。

 

顎関節治療は先代達が築き上げて来た、こうした長い歴史があります。

 

 

その中でも、Niles F.Guichet、(ギシェー)は稲葉先生が崇拝する先生です。

 

ギシェーは、1957年Arne Lauritzenより咬合に関する疾患と治療法について学びました。その後Charles E.Stuartの門をたたき、咬合について特に顎運動の精巧さと顎運動が咬合面に与える影響について深く学ぶことになります。

 

時を同じくして、John Woehler,L.D.Pankeyに影響を受け、歯科治療を見極める目を教えられました。
その他D’Amico,Earl Pound,Peter Neff,Parker Mahan,P.K.Thomasら多くの方々の影響を受けました。
そのためこれらの人の考えをまとめ、Guichetの理論を作り上げました。

 

その結果、

 

1.咬合の各学派の考え方をうまく取り入れた理論です。

2.常に実践的です。

3.咬合理論の統合と普及を行いました。

4.咬合病の考え方を発表し、咬合と姿勢、筋骨格系との関連をさせたこと、X線診断を関連付ける業績を残しています。

Dener Mark Ⅱ・D4H・D4A・D5Aの開発者でもあります。

 

 

現在否定されている、ナソロジーの誤解は、

 

・中心位は生涯普遍のもの

 

・RUM のポジション

 

・機械論的であること

 

・全顎をすべて修復すること

 

ということがあったと思いますが、これらは、ナソロジーのほんの一部です。

 

ナソロジーは歯科医師、歯科技工士であるなら1度は勉強する必要があると思います。

 

現在もアメリカでは、

 

AES 〜 Leaders in Occlusion,TMD,Comprehensive Oral Care〜

 

という1955年に設立された学会が引き継がれています。

 

この学会は、スチュアート先生、ギシェー先生、そして稲葉繁先生もメンバーでした。

 

AES is the leading organization of dental professionals advancing the science and clinical application of knowledge in Occlusion, TMD and Comprehensive Oral Care for the well being of those we serve.

 

というように、AESは、咬合と顎関節との密接な関わりを前提としている学会という事がわかります。

 

学会発表の内容を見てみると、ほとんどが咬合と顎関節の内容だったので、驚きと同時に嬉しく思いました。

 

ぜひ、次回の学会に参加することができればと思います。

 

 

また、今回のセミナーは内容盛り沢山だったので、こちらの論文はサラッとしか触れることができませんでしたが、稲葉先生がドイツへ留学することになった大きなきっかけとなった論文です。

 

チュービンゲン大学の口腔外科、シュルテ教授の論文で、大変衝撃を受けたと言います。
素晴らしい内容で、シュルテ教授の講義を受けたくて、チュービンゲン大学に留学した、稲葉先生。

 

朝8時から夜の9時まで毎日2週間、顎関節症のレクチャーを受けました。

 

顎口腔系の機能障害(Funktionstoerungen)の診断と治療で高名なTuebingen大学のProf.Schulteは、442名の治癒例を詳細に分析し、独特な診断・治療法を確立しました。

 

稲葉先生はシュルテ教授のシステム化された治療方針に従い、治療を行い効果をあげています。

 

1例をあげると、患者の主疼痛側が右側にあり、下顎の側方への偏位が右側に存在する場合、上記のシェーマを選択します。

 

この場合の疼痛の原因としては、右側の運動に作用する筋の過緊張があり、早期接触および滑走右側に向かう、また就寝時の体位と主咀嚼側かどちらを質問します。

 

最大開口位で顎関節のレントゲンを撮影してみると、右側は前方に移動せず、左側は、前方に滑走しているはずです。

 

口腔内の観察では、このような患者では、右側においては、

 

  1. 上顎の智歯の挺出
  2. 下顎智歯の慢性炎症
  3. 側切歯から第一大臼歯にかけての偏心咬合とそれにともなう咬耗面がある
  4. 咬合支持を失っており、左側への偏心咬合がある

 

左側においては、
  1. 下顎智歯の挺出
  2. 上下顎大臼歯部の早期接触が認められる
  3. 義歯の沈下等の咬合不均衡がある
筋の触診では右側の顎二復筋後腹、咬筋、および側頭筋の疼痛、左側の外側翼突筋、側頭筋の疼痛が認めらます。
以上のような診断をした結果90%の人がNo.1~No.5までのシェーマに入り、これをもとに治療法の決定を行います。
治療法は主に4つの段階を踏むが、第一段階である理学療法や咬合調整で2週間程度で治癒に向かい、20%の人は2ヶ月以上を要し、11.2%の人は、他の原因であったと述べています。

 

もし右側に痛みを訴えたならば、さらに最大開口していただき、下顎の側方偏位の方向を調べてみます。

右側に偏位が認められた場合は、上記の図に示した状態が認められる事が多いはずです。

多くの場合、顎関節のX線写真では、最大開口位で右側はほとんど位置の異常は認められないか、あるいはわずかに後方にあり、左側は顆頭が前方に位置しています。

口腔内を観察してみると、右側では下顎の智歯が欠損し、上顎の智歯が挺出しています。

左側に目を移してみると、下顎智歯の挺出があり、下顎の前方運動を妨げています。

大臼歯部の咬頭干渉や、不正なテコ現象、早期接触、不正咬合や義歯の異常な咬耗が認められることが多くあります。

このような場合、筋の触診にいては、右側では咬筋、側頭筋、顎二腹筋後腹、後頸筋群に、左側では側頭筋および外側翼突筋に圧痛が認められることが多いです。

以上のように、

主疼痛側が右側にあり、開口時の右側への偏位が認められる場合にかなり当てはまる事が多いのですが、同様の症状は主疼痛側が左側にあり、下顎の偏位が右側にある場合も認められます。

 

 

これとは逆に、主疼痛側が左側にあり、下顎の偏位が左側に認められる場合や、主疼痛側が右側にあり、下顎の偏位が左側に認められる場合は、前記の状態とは正反対になります。

 

この内容を知るだけでも、今回のセミナーの価値があったと思うので、どうぞ見直してみて、患者様の顎の状態と見比べていただくことができればと思います!!

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